『安藤昇の戦後ヤクザ史 昭和風雲録』
林田力
安藤昇『安藤昇の戦後ヤクザ史 昭和風雲録』(ベストブック、2012年)は渋谷を拠点にしたヤクザ安藤昇の半生記である。著者は安藤昇となっているが、安藤氏へのインタビューとして構成される。安藤氏は戦後すぐに安藤組を結成し、企業乗っ取り屋の横井秀樹襲撃事件などを起こした。安藤組は天照大神を崇める伝統的な任侠と比較してユニークな存在である。安藤氏は法政大学中退で、組幹部も大卒や中退者が多いという高学歴が特徴である。刺青・指詰め・薬物を禁止した。1964年に安藤組を解散し、解散後は俳優や作家として活躍する異色の人生を歩む。
ヤクザは反社会的勢力であるが、昭和のヤクザは現代の半グレ、ヤンキーと比べると悪なりの美学を持っていた。昭和のヤクザに比べれば関東連合などの半グレ、ヤンキーは屑としか言いようがない。安藤組は愚連隊に近いが、現代の半グレ・ヤンキーにはない美学がある。たとえば「誰だって金は欲しいだろうけど、約束は約束なんだ」と述べて、後から高い値を提示した企業ではなく、先に約束した相手に販売している(231頁)。
安藤組はプロレスのスター力道山と悶着を起こし、狙撃計画にまで発展するが、それも義侠心を背景にしたものである。現代の半グレによる市川海老蔵や朝青龍への攻撃とは性格が異なる。
山口組と美空ひばりの例を出すまでもなく、芸能興行はヤクザが支えていた。当時の芸能界は大手映画会社の五社協定というカルテルがあったが、安藤組は五社協定を無視して各社の専属スターを集めたショーを開催した(77頁)。ヤクザの横紙破りであるが、現在の商業倫理からすれば五社協定の方が不公正である。
むしろヤクザが活動した戦後は企業があくどいと言うべきか。安藤組が襲撃した乗っ取り屋の横井秀樹は、その典型である。その背後にいる東急グループ創業者の後藤慶太(強盗慶太)も、どうしようもなく古い体質の人間であることが分かる。ヤクザが反社会的勢力として消されていく一方で、ヤクザと持ちつ持たれつで来た東急グループのような企業が大企業の信用を振り撒いていることは釈然としないものがある。

シェアして拡散していただけるともっと嬉しいです。Facebookでの記事に対するご意見、ご感想をお待ち申し上げます。一緒にFacebookを楽しみましょう。
【既刊】『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』『東急不動産だまし売り裁判購入編』『東急不動産だまし売り裁判2リバブル編』『東急不動産だまし売り裁判3』『東急不動産だまし売り裁判4渋谷東急プラザの協議』『東急不動産だまし売り裁判5東京都政』『東急不動産だまし売り裁判6東急百貨店だまし売り』『東急不動産だまし売り裁判7』『東急不動産だまし売り裁判8』『東急不動産だまし売り裁判9』
『東急不動産だまし売り裁判10証人尋問』『東急不動産だまし売り裁判11勝訴判決』『東急不動産だまし売り裁判12東急リバブル広告』『東急不動産だまし売り裁判13選挙』『東急不動産だまし売り裁判14控訴審』『東急不動産だまし売り裁判15堺市長選挙』『東急不動産だまし売り裁判16脱法ハーブ宣伝屋』『東急不動産だまし売り裁判17』『東急不動産だまし売り裁判18住まいの貧困』『東急不動産だまし売り裁判19ダンダリン』
『東急不動産だまし売り裁判訴状』『東急不動産だまし売り裁判陳述書』『東急不動産だまし売り裁判陳述書2』『東急不動産だまし売り裁判陳述書3』
『東急大井町線高架下立ち退き』『東急不動産係長脅迫電話逮捕事件』『東急コミュニティー解約記』『東急ストアTwitter炎上』『東急ホテルズ食材偽装』
『裏事件レポート』『ブラック企業・ブラック士業』『絶望者の王国』『歌手』『脱法ハーブにNO』『東京都のゼロゼロ物件』『放射脳カルトと貧困ビジネス』『貧困ビジネスと東京都』
『二子玉川ライズ反対運動1』『二子玉川ライズ反対運動2』『二子玉川ライズ反対運動3』『二子玉川ライズ反対運動4』『二子玉川ライズ反対運動5』『二子玉川ライズ住民訴訟 二子玉川ライズ反対運動6』『二子玉川ライズ反対運動7』『二子玉川ライズ反対運動8』『二子玉川ライズ反対運動9ブランズ二子玉川の複合被害』『二子玉川ライズ反対運動10』『二子玉川ライズ反対運動11外環道』『二子玉川ライズ反対運動12上告』
林田力 東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った 東急不動産係長脅迫電話逮捕事件 二子玉川ライズ反対運動 東急リバブル広告 東急ストアTwitter炎上 東急ホテルズ食材偽装 東急ハンズ過労死 ブラック企業・ブラック士業 脱法ハーブにNO 東京都のゼロゼロ物件 東急不買運動 東急リバブル東急不動産不買運動 アマゾン ブログ ツカサネット新聞 リアルライブ 本が好き v林田力 家計簿 ワンピース 韓国 江東区長 選挙 東陽町 世田谷区 Hayashida Riki hayariki tokyufubai amazon wiki wikipedia facebook