『極卵』

林田力

仙川環『極卵』は食の安全を問う社会派ミステリー作品である。吉祥寺の自然食品店で販売されている卵「極卵(ごくらん)」は、1個250円と価格は高いが、「極上の味」をキャッチフレーズに大人気であった。ところが、この極卵を食べた人が食中毒になり、死者も出る。主人公の元新聞記者・瀬島桐子は取材を始めるが、遺伝子組み換え食品を手がける大企業の影がちらついていた。

東急ホテルズ食材偽装事件など食の安全が脅かされる中でタイムリーな作品である。本書の面白いところは、自然食品が善玉という単純なステレオタイプに陥っていないところである。物語の発端も自然食品店で販売された自然卵である。自然食品を好んで購入する「意識の高い」消費者の方がカモになる。さらに物語が進むと、自然食品を声高に叫ぶ組織は自分達の主張を通すために犯罪にも手を染めるエピソードが出てくる。この独善性は現実社会の放射脳カルトに通じる。

桐子はラストで「手段を選ばず自分の主張を通そうとする人たちを許すことはできない」と述べる。その通りである。ある二次小説の主人公は「目的のためなら手段を選ばない人間と思われるほど、腹が立つことは無い」と述べている(甘蜜柑『銀河英雄伝説 エル・ファシルの逃亡者』第百二十三話「一瞬の高揚、押し寄せる書類、歩き出すイメージ」)。


林田力


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