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『ジョージィの物語 小さな女の子の死が医療にもたらした大きな変化』

林田力

ソレル・キング著、奥田昌子・高山真由美著『ジョージィの物語 小さな女の子の死が医療にもたらした大きな変化』(英治出版、2015年)は医療事故で娘を失った母親が、医療従事者とともに病院を変えていくノンフィクションである。

本書は医療過誤の経験を語り、医療過誤をなくすために取り組む。幼児ジョージィは火傷で入院したが、退院間近のところで容態が急変し、死亡した。母親の無念はいかばかりか。「帰宅するまでが遠足」ではないが、順調に回復し、退院間近という時が危ない。私の祖母も入院後に主治医から退院を示唆されるまで回復し、リハビリをしていたが、亡くなった。

医療過誤をなくそうとする著者の活動は素晴らしいものであるが、幸運に恵まれてもいる。著者は不快に感じるだろうが、加害者である病院の態度はまともであった。病院は進んで非を認め、和解金を支払う。病院側の代理人弁護士が著者の医療過誤防止の取り組みに協力する。

現実の紛争で、このようなケースは稀である。本書でも以下の指摘がある。「医療過誤については、誰もあまり話したがらないのです。医師や看護師はその事実を公にしようとはしませんし、患者は亡くなっているか、あるいは泥沼のような法廷闘争のただなかにいます」(177頁)

日本では加害者の弁護士が被害者に被害届取り下げを強要して逮捕された。強姦加害者の弁護士が被害者側に示談に応じなければ強姦ビデオを返却しないと脅したケースがある。交渉ならば何をやってもいいとデタラメな論理を振りかざすブラック士業が社会問題になっている。アメリカは訴訟社会で自分の非を絶対に認めないというステレオタイプな見方があるが、米国の文化人類学者ルース・ベネディクトが『菊と刀』で日本を恥の文化と指摘したように日本の方が倫理観に問題があるのではないだろうか。

医療事故で娘を亡くした著者は加害病院が潰れてしまえばいいというほど怒り、恨んだ。本書は、その気持ちを率直に記している。それは当然の思いである。その著者が加害病院とも協力して医療過誤防止に尽力する。これは復讐から建設的な方向という歴史性に乏しい日本人好みの展開である。

しかし、それは加害病院が最初から問題を認識し、比較的誠実な対応をしたという要素があって成り立つものである。そこを無視して著者のような姿勢こそが被害者にとって建設的なものと主張するならば、被害者を追い詰めることになる。ほとんどの被害者は加害者の不誠実に苦しめられ、加害者に非を認めさせるという当たり前のことに悪戦苦闘している。問われるべきは被害者よりも加害者の姿勢である。


林田力

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