『なぞらずにうまくなる子どものカタカナ練習帳』

林田力

桂聖、永田紗戀『なぞらずにうまくなる子どものカタカナ練習帳』（実務教育出版、2015年）は、その名の通りカタカナの練習帳である。『なぞらずにうまくなる子どものひらがな練習帳』のカタカナ版である。

本書は文字の練習帳としては個性的である。第一にアイウエオ順ではなく、子どもが学習しやすい順に文字を配列している。五十音順は発音の観点からは、機能美のある順序であるが、本書は「フ」「ラ」「ワ」「ウ」の順にするなど似た形の文字を並べることで、文字学習者に易しくしている。

第二に文字の書き方をストーリー仕立てにしている。たとえば右上がりの線を書くところでは「おかをのぼるよ」と表現する。逆に斜めに下がる線を書くところでは「すべりだいだよ」と表現する。これによって文字を頭で覚えやすくしている。

文字の難しいところは同じように書いているにも関わらず、少しの傾斜角度の違いで「何か違う」となってしまうことである。本書では「ちいさなおかをのぼるよ」などの表現で、その辺りの差異を認識できるようにしている。また、「へんなところはどこ」のコーナーでは「何か違う」感じの字を提示することで、どこが変かを考えさせるようにしている。子どもはパズル感覚で遊びながら勉強できる。

ここまでの書評からは本書が文字を書けるようになることに特化しているように感じられるかもしれない。しかし、本書は文字だけでなく、言葉の勉強になる。カタカナの各文字を練習するところでは、その文字を使った単語も書くようになっている。例えば「ロ」にはロシアの単語がある。単語の箇所には単語を示すイラストが描かれている。ロシアの箇所にはマトリョーシカのイラストが描かれている。マトリョーシカがロシアの特産品であることを知ることになる。本書は知識も身につけることができる。

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