『建築革命』建築許可の是非

林田力

五十嵐敬喜、耐震偽造から日本を立て直す会『建築革命―偽装を超えて「安全」で「美しい」まちへ』(KJブックス、2006年)は耐震強度偽装事件を出発点として、建築のあるべき姿を提言する。日本の都市を安全で美しいものにするために建築確認制を建築許可制に、建築士を職能者に変更することを主張する。

本書で指摘される不動産業者の「売ったら売りっぱなし」無責任体質は東急不動産だまし売り裁判原告として非常に納得できるものである。「宣伝広告はきれいな言葉で表現していますが、実際建っている建物と広告宣伝の差は凄まじいものがある」(186頁以下)

また、不動産トラブルが報道されにくい事情も以下のように指摘されている。「このごろ新聞が厚くなり、また重くなってきました。広告が多くなったからですが、それを見ると、実に不動産の広告が多い。見ようによっては、新聞などはこの広告が欲しいために報道しない、大きく言えば広告料で買収されているのではないか、と疑いすら持ちたくなります」(179頁)

本書の問題意識には深く賛同しつつも、建築許可や総有という方向性には違和感がある。本書の中で批判への再反論も掲載されているが、私は以下のように考える。

第一にマンション建築紛争被害者の問題意識にストレートに結びつかない。デベロッパーの建築自由という名の横暴に苦しめられた人々が規制に期待することは自然である。しかし、総有という形で全ての土地所有権を規制することには論理の飛躍がある。問題はデベロッパーによる開発であって、その規制が求められている。

全ての土地所有を一律に規制することは、個人所有者を敵に回し、わざわざハードルを高くしてしまう。地区計画的な発想では自己の土地所有権を規制対象とすることは当然であり、自らも規制してこそ開発業者にも規制を要求する思想は高尚である。しかし、個人の土地所有者は小なりとは言え、自立心がある。地区計画的な規制強化の進め方は理解が得られにくく、躓きの石になりやすい。

無論、デベロッパー的土地所有と個人の土地所有を峻別することは法技術的には容易ではない。それでもデベロッパー的開発をピンポイントで規制する法理論を構築した方がマンション被害者の問題意識にはストレートである。

第二に再開発や区画整理の問題意識とギャップがあることである。再開発や区画整理では土地所有権を一方的に制限する横暴によって人々が苦しめられている現実がある。それによって東京都世田谷区の二子玉川ライズのように美しくもなく、安全でもない街がつくられている。

第三に権利本位の私法体系との異質さである。社会問題は権利に権利を対抗させることで解決してきた歴史がある。資本家の所有権による合法的な横暴に対抗するために労働者の権利が定められた。賃貸人の所有権による合法的な横暴に対抗するために賃借権が強化された。比較的新しい企業の悪徳商法に対抗するために消費者の権利が定められた。私も東急不動産のマンションだまし売りに対して消費者契約法に規定された消費者の取消権で対抗した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。

この歴史を踏まえれば街づくりも住民の住環境に対する権利で対抗する思想が自然である。現実に環境権という概念がある。二子玉川ライズ差し止め訴訟など多くの建築紛争の裁判で住民側の拠り所として環境権が使われている。裁判所は環境権に消極的で有効な武器とならない現実があるが、立法的解決を目指すならば環境権に基づく訴権を認めるなどのアプローチもある。

建築許可も同じである。規制強化という方向性は理解できるが、許可という行政の裁量に委ねてしまうことで果たして住環境が守れるか不安がある。むしろマンション建設反対運動に取り組んでいた人々ならば行政に委ねられないことは肌感覚で分かるのではないか。二子玉川ライズのように世田谷区が東急電鉄という開発業者と密約して高層化を推進した事例もある。影響を受ける住民の異議申立権を認めるというようなアプローチも考えられる。


     
【既刊】『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』『東急不動産だまし売り裁判購入編』『東急不動産だまし売り裁判2リバブル編』『東急不動産だまし売り裁判3』『東急不動産だまし売り裁判4渋谷東急プラザの協議』『東急不動産だまし売り裁判5東京都政』『東急不動産だまし売り裁判6東急百貨店だまし売り』『東急不動産だまし売り裁判7』『東急不動産だまし売り裁判8』『東急不動産だまし売り裁判9』
『東急不動産だまし売り裁判10証人尋問』『東急不動産だまし売り裁判11勝訴判決』『東急不動産だまし売り裁判12東急リバブル広告』『東急不動産だまし売り裁判13選挙』『東急不動産だまし売り裁判14控訴審』『東急不動産だまし売り裁判15堺市長選挙』『東急不動産だまし売り裁判16脱法ハーブ宣伝屋』『東急不動産だまし売り裁判17』『東急不動産だまし売り裁判18住まいの貧困』『東急不動産だまし売り裁判19ダンダリン』
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