小説仕立ての法律書『民事の訴訟』

林田力

福永有利、井上治典『民事の訴訟 補丁版 事例でみる手続きの展開』(悠々社、1996年)は民事訴訟の法律書に分類される書籍である。著者は二人とも民事訴訟法を専門とする大学教授である。タイトルからしても著者の経歴としても典型的な民事訴訟の法律書と考えたくなるが、本書は法律書としては異色である。

本書は医療過誤訴訟という具体的な事件について、法律相談から提訴、判決、控訴、訴訟上の和解の成立という民事訴訟の一連の流れを叙述する。その意味で抽象的な条文の解釈や学説の紹介が並ぶ法律書とは大いに趣を異にする。具体的な事件を追いながら、訴訟手続きを概観できる仕組みになっている。

一方で本書は、あくまで法律書に分類される。ジョン・グリシャムの作品に見られるような法廷を舞台としたリーガル・サスペンスではない。章末には「解説」と題する項目を挿入し、訴訟手続きの基本的な事項を説明する。本書が民事訴訟の勉強のための書籍であることを思い起こさせる。訴状や答弁書などの裁判で使われる書類を掲載しており、分かりやすくするために学習書としてのレベルを落とすような妥協はしていない。

本書で扱う事件は、一人娘を入院中に亡くした母親による、病院と診察した医師個人に対する損害賠償請求訴訟である。本書は小説仕立てであっても小説ではないため、真実を追求し、不正を糾弾するというようなドラマチックな展開はない。淡々と訴訟手続きが進行していく。

また、本書は小説のようにし特定の主人公の活躍を描いたものではない。民事訴訟では訴えるのは原告であり、被告は受身になる。そのため、本書でも原告側の記述が多くなるが、他の立場からの視点もある。被告である病院での内部での協議や、判決内容を決める裁判官の評議の様子も記述しており、民事訴訟の全体像を理解できるようにしている。

私自身は消費者契約法(不利益事実不告知)に基づき、東急不動産(販売代理:東急リバブル)から購入したマンションの売買契約を取り消し、訴訟で売買代金返還を求めた経験がある(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。個人が組織を提訴したという点で本書の原告と同じ立場である。一審では勝訴し、控訴審において一審判決に沿った内容での訴訟上の和解が成立した点も共通する。

故に原告側に感情移入したくなるが、本書の客観的な叙述は小説として読む上では物足りない。一方で訴えられた組織側の内幕が描かれているのは貴重である。責任逃れに汲々とする組織人の嫌らしさが理解できる。長々と協議をするものの、最後は「相手の出方をみる」という結論に落ち着き、問題解決のために主体的に動こうとはしない。これは東急不動産との裁判で私が感じたことと同じである。

民事訴訟法は無味乾燥と言われる法律学の中でも、その傾向が強い分野である。民事訴訟を略した「民訴」を「眠素」と置き換え、勉強すると眠くなる科目とする俗語があるくらいである。これは日本の民事訴訟法学がドイツ法学の影響を強く受けており、概念を体系的に説明しようとする傾向が強いことが影響している。

難解な術語を登場させて体系だった理論構築に腐心するあまり、現実の訴訟手続きから遊離してしまう。この結果、民事訴訟法の法律書を通読しても、弁論主義や訴訟物理論など術語の議論ばかりで、訴訟手続きが一向に頭に入ってこない。この点において、本書は具体的な訴訟手続きの開始から終結までを記述しており、民事訴訟法の概要をつかむためには非常に有用な書籍である。


     
【既刊】『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』『東急不動産だまし売り裁判購入編』『東急不動産だまし売り裁判2リバブル編』『東急不動産だまし売り裁判3』『東急不動産だまし売り裁判4渋谷東急プラザの協議』『東急不動産だまし売り裁判5東京都政』『東急不動産だまし売り裁判6東急百貨店だまし売り』『東急不動産だまし売り裁判7』『東急不動産だまし売り裁判8』『東急不動産だまし売り裁判9』
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