林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』

「もめタネ研」で東急不動産だまし売り裁判から住宅政策を検討

初出:林田力「「もめタネ研」で東急不動産だまし売り裁判から住宅政策を検討」JANJAN 2010年02月09日

 「もめごとのタネはまちづくりのタネ研究会」(もめタネ研)が2010年2月5日に2月定例会を東京都世田谷区の三宿まちづくりハウスで開催し、私が東急不動産だまし売り裁判を報告した。もめタネ研は多発する建築紛争について、実例や制度を検討し、まちづくりの視点から問題の所在と解決方法のあり方を考える研究会で、私も入会している。主要な活動は月1回の定例会で、建築紛争事例やまちづくりの動き等の報告を受け、検討している。

 東急不動産だまし売り裁判は東急不動産(販売代理:東急リバブル)が不利益事実(隣地建て替えなど)を隠して新築マンションをだまし売りし、購入者である私が消費者契約法により売買契約を取り消し、売買代金を取り戻した事案である。不動産トラブルは現地のイメージがないと理解されにくい面があるため、プロジェクターでマンションの写真や東急不動産が裁判で提出した虚偽の証拠文書などを映しながら説明した。

 たとえば東急不動産が提出した図面(乙第1号証)の虚偽である(写真1参照)。

1

東急不動産が裁判で提出した虚偽の図面。図面右上の居室番号が8階の住戸も「201」「202」「203」というように、ありえない内容になっている。(撮影・林田力)


 この図面には上部に「明るいバルコニーに面した・・・・・・」「ご家族の会話が楽しめる・・・・・・」とのキャッチコピーが書かれている。ここには建て替えられる側(図面の左側)の窓からの日照や眺望の良さが触れられていない。これを根拠として、東急不動産は隣地建て替えで失われる日照や眺望をセールスポイントとしていなかったと主張した。

 しかし、実際は販売時に購入者に配布された図面は乙第1号証とは別物であった(写真2参照)。

2

販売時に購入検討者に配布された図面


 このため、裁判で私は配布された図面を証拠(甲第15号証)として提出し、東急不動産提出証拠の虚偽を主張した。甲第15号証ではキャッチコピーが印刷されていない。従って「セールスポイントとしていなかった」とする東急不動産の主張は成り立たない。

 乙第1号証が購入者に配布されたものではないと断言できる決定的な根拠は図面右上の居室番号の誤りである。乙第1号証には以下の2点の誤りがある。

 第1に階数と居室番号の非対応である。乙第1号証拠では8階の住戸の「201」「202」「203」というように全ての階の住戸番号が「20」で始まっている。常識的に考えて8階の居室を201号室と名付けることはありえない。

 第2にタイプと居室対応の非対応である。実際の204号室が乙第1号証では201号室となっている。

 これらの決定的な誤りから乙第1号証が購入者に配布された正規の図面ではないことは明らかである。裁判対策のために細工された図面として、原告陳述書(甲第42号証)などで東急不動産の虚偽を厳しく批判した。捏造が見破られる虚偽証拠を提出するという、不誠実さと杜撰さが同居した東急の体質については、同じく東急グループのマンション建設反対運動に携わる参加者からも共通性が指摘された。

 今回の報告では施工やマンション管理の問題(関連記事参照)も追加した。私は景住ネット首都圏交流会でも東急不動産だまし売り裁判について報告したが、今回は研究会の趣旨(まちづくりの視点から検討する)を踏まえ、個別被害にとどまらない巨視的な論点の提供に努めたためである。また、私以外の東急リバブル東急不動産の物件購入者のトラブル事例も追加し、東急不動産だまし売り裁判が氷山の一角に過ぎないことを示した。

 研究会では分譲マンションそのものについて批判的な意見が提示された。マンションの図面は東急不動産の虚偽証拠の説明のために紹介したが、そもそもこの程度の図面しか購入検討者に渡されないことで十分であるのか問題提起された。ここから一歩進んで分譲マンション購入自体が消費者にとって大きなリスクであり、消費者を必ずしも幸せにするものではないのではないかとの議論に及んだ。

 一方で日本の住宅政策は持ち家偏重である。分譲購入者には住宅ローン減税や固定資産税の減免などの優遇策があり、賃貸住宅の選択者には不公平感がある。一方で分譲住宅の購入動機には「家賃は高い」「高齢になると家を借りにくくなる」という消極的な理由が一定の割合を占めており、外的要因で分譲に誘導されてしまっている面がある。このために持ち家偏重を見直し、優良な賃貸住宅という選択肢を検討すべきではないかとの意見が出された。

 また、タワーマンションの高層階に住むことがステータスという商業マスメディアの作り出した風潮に対し、心理的・生理的な影響も指摘されている高層階に住むことが幸せなのかという発想を草の根で広めていくべきではないかとも主張された。東急不動産だまし売り裁判から住宅のあり方という本質論に迫った有意義な研究会であった。


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東急不動産(販売代理・東急リバブル)から不利益事実を隠して問題物件をだまし売りされた著者(=原告)が消費者契約法に基づき売買契約を取り消し、裁判で売買代金を取り戻した闘いの記録(ロゴス社、2009年7月1日発行)。
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