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『原発ホワイトアウト』

林田力

若杉冽『原発ホワイトアウト』(講談社、2013年)は現役官僚が書いたとされる小説である。小説の体裁であるが、原発問題をめぐる実在の人物・団体をなぞっている。物語は2013年の参議院議員選挙から始まる。日本政府は原発再稼動を進めようとする。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」(318頁)という日本人の非歴史性に絶望的な思いになる。過去を水に流す性質を美徳と捉える向きもあるが、暗い過ちを記憶にとどめることなしには学習も進歩もあり得ない(林田力「日本社会の非歴史性が問題だ」PJニュース2010年6月26日)。

原子力村の利権構造が描かれている。原子力利権にとっては原発そのものだけでなく、電力会社の地域独占システムが重要であることが分かる。政治家が電力利権で骨抜きにされている実態も描かれる。政府が電力自由化を進めても肝心のところは骨抜きにされ、既得権が維持される危険も示している。

この既得権維持と改革のせめぎあいを本書は世代間闘争と位置付けている。「逃げ切り団塊世代とその後に続く高負担世代との闘争なのだ」(44頁)。経済産業省の中にも若手官僚は、電力自由化を進めなければならないと考えている。だからこそ現役官僚とされる著者が本書のような書籍を出す動機がある。

脱原発側の描写も実態を下敷きにしている。本書では参院選で脱原発俳優の山下次郎が初当選した。山本太郎を連想させる。山本太郎は当選直後に離婚が明らかになった(「山本太郎氏、異常な離婚会見 「黙っていた」と繰り返すもウソは明白」ZAKZAK 2013年8月7日)。本書の山下次郎も「家族内の恥ずかしい話も、なぜか週刊誌に情報が流れました」と述べている(45頁)。週刊誌の報道を国家権力の陰謀視する点も共通する。

本書は脱原発運動に対して好意的であるが、辛らつな評価もある。「定職のない若者や定年後の高齢者が、やり場のない怒りをぶつけるステージに近かった」(36頁)。これは良くも悪くも現役官僚として脱原発運動を突き放して評価できる立場らしいものである。

一方で頭でっかちというか、脱原発運動ドグマに染まり過ぎて現実離れした設定もある。脱原発派の元女子アナウンサー・玉川京子は父親が福島県で牧場主をしていた。父親は福島原発事故後も出荷を続けたが、ヒステリックな放射脳カルトからバッシングを受け、鬱病になり、自殺してしまう。このために彼女は「父を死に追いやった原子力発電所に対して徹底的な復讐を誓った」という設定である(42頁)。

しかし、現実に彼女のような立場に置かれたならば原発を憎むよりも、放射脳カルトを憎むだろう。彼女の父親は原発というよりも、放射脳カルトに殺されたというようなものである。放射脳カルトが巣食っているように見える脱原発運動にも嫌悪感を覚えるだろう。これは脱原発運動が市民的な広がりを得られない一因である(林田力『放射脳カルトと貧困ビジネス』Amazon Kindle)。原発が諸悪の根元であり、原子力村だけを敵とすればいいと割りきれるほど人々は単純ではない。

また、脱原発の野党政治家として、山本太郎に相当する山下次郎ばかりを活躍させている点も脱原発運動ドグマに染まり過ぎて現実離れしている。2013年参院選の脱原発側のトピックは山本太郎当選だけでなく、日本共産党の躍進もあった。

福島原発事故以前の反原発派には日本共産党にわだかまりを持つ人々も少なくない。そのような人々が、自民党公明党圧勝の選挙結果の中で山本太郎の当選だけを唯一の希望と位置付けたがることは理解の範囲内である。しかし、その見方に本書が乗っかっていることは、現役官僚の著書らしくない。

日本共産党が好きか嫌いかは別として、政治勢力を正しく評価しなければ物語のリアリティーが失われる。議会は会派が動かしている。脱原発運動の中で山本太郎の言動が耳目を集めるとしても、現役官僚ならば無所属議員一人よりも日本共産党の方がはるかに手強く感じるものではないか。

林田力

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