書評『パレスチナ・そこにある日常』

林田力

高橋美香『パレスチナ・そこにある日常』(未来社、2010年)はイスラエルの占領に苦しむパレスチナの人々の日常を描いた書籍である。パレスチナと聞くと戦地というイメージを抱きがちであるが、パレスチナ人が日常生活を送る場所であることを本書は描いている。

私は著者の写真展を2015年12月に江東区東陽の江東区文化センターで開催した。その際は多くの人々が興味を持つようにパレスチナ人の日常生活中心とリクエストした。しかし、本書を読むとイスラエルの占領の非道に胸が痛む。イスラエルの心理や手口は地上げ屋や追い出し屋と変わらない。悪徳不動産業者が軍隊を動かしている点がイスラエルの恐ろしいところである。そのように考えることがパルスチナ紛争の正しい理解になるのではないか。

著者の関心は人々の日常生活にある。現地の人のためにならないNGOの活動にも疑問を呈している。No Violenceと書かれたTシャツ着用で非暴力をアピールするNGOに対して以下のように述べる(35頁以下)。

「ほかに取るべき道がないほどに追い込まれた人びとの前で、理想ばかりを押し付けるのはいかがなものか」「このTシャツを何十枚も作るお金で、もっと有効な、もっと差し迫った人びとへの援助ができたのではないだろうか」。

もともと戦後日本のパレスチナ問題への関心もアラブ社会主義との連帯という類の左翼的なイデオロギーに偏っていた傾向がある。日常生活に目を向ける著者の姿勢は貴重である。この著者の姿勢はパレスチナ問題で見落とされがちなアラブ系イスラエル人の苦しみにも目を向けている。アラブ系イスラエル人は決して優遇されている訳ではない。逆にパレスチナ自治区の方が相対的には自由な空気があると感じている。

「一歩自治区へ入ると、不思議なくらい空気が和らいだように思えた。実際には自治区内にもエルサレムに負けず劣らず多くの問題、課題が山積みだとしても、少なくともパレスチナ人としてある程度自由に振舞える空気がエルサレムに比べてあるように思える。つねに二級市民であることを強いられる『ユダヤ人国家イスラエル』の市民であるよりは」(145頁)

ここには小さな希望がある。良くも悪くも自分の国を持つことは、イスラエルの占領下よりも改善であると希望を持てる。日本の左派左翼はインターナショナル意識を引きずっているためか分離独立の動きに意外と冷たい。東ティモールでも南スーダンやダルフールでも左派左翼の側からの一方的分離独立擁護論は乏しい。沖縄でさえ中々独立論には結びつかない。その種のインターナショナル意識は占領に苦しむ人々の生活感覚とは離れた空論である。

一方で南アフリカのホームランドのような形の独立は支配と従属を固定化するだけとの警戒心もある。この点でも本書には興味深い指摘がある。パレスチナ自治区のナーブルスではイスラエル軍の検問が強化された結果、住民が町の外に出にくくなったために町の中で買い物を済ますようになり、逆に町の経済が上向き、綺麗なショッピングモールが整備されたという(182頁)。イスラエルから経済的に分離できればパレスチナ人は幸福になれるとの希望を抱かせる。

本書は「あとがき」で「完全にイスラエルの経済政策のなかに組み込まれ、従属させられ、水の供給、電力の供給、土地の使用、輸出入の通関、さまざまな側面から、経済的な自立を阻まれている」ことを「みえにくい」パレスチナ問題と指摘する(219頁)。そこを考えるとパレスチナの経済的自立こそが重要課題である(イスラエルからの経済的自立であり、アラブ諸国との市場統合が現実的だろう)。

林田力

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