『ラットランナーズ』

林田力

オシーン・マッギャン著、中原尚哉訳『ラットランナーズ』(創元推理文庫、2015年)は未来のロンドンを舞台にした小説である。主人公達はラットランナーズと呼ばれる不良少年である。マフィアの仕事もするが、決して卑しくはなく、自分なりの美学を持っており、一定の倫理感はある。だから物語の主人公になれる。目的のためには手段を選ばない卑怯者では感情移入できない。

この手の物語には主人公のライバルにはならないが、向こうが勝手に対抗意識を燃やすチンピラが登場して主人公の邪魔をすることが定番である。巨悪ではないが、巨悪以上にうざい存在である。本書にも、そのようなチンピラが登場する。歴史意識が乏しく「昨日の敵は今日の友」が大好きな日本の作品では最後には憎めないキャラになってしまうパターンも少なくない。しかし、本書はラストに痛烈なしっぺ返しを用意している。

本書は冒険小説として純粋に楽しめるが、その描く未来社会も興味深い。本書の描く未来のロンドンは犯罪やテロの抑止を名目として高度な監視社会になっている。一つのディストピアである。ディストピアはユートピアの裏返しであり、思想においてユートピアと紙一重なところがある。高度な全体主義体制は個人の自由や多様性を犠牲にするが、たとえば飢える人がいない、犯罪が少ないなど肯定面もない訳ではない。

これに対して本書の社会では犯罪組織が跋扈するなど全体主義的ユートピアとも言いにくい。治安さえも監視の徹底によって犯罪は抑止されているが、そのために刑事は削減され、殺人事件の捜査も十分にできない状態である。監視社会という面だけが突出した社会である。ハイエナ資本主義(通俗的な新自由主義)を突き詰めた社会のように感じた。

このような未来は社会学の分野でも議論されている。社会学者のデイヴィッド・ライアンは、消費主義が浸透した都市では消費文化に参加できない人々が社会的に排除されると指摘する。そのような人々を抑圧するために監視カメラなどの監視が強化されるという(David Lyon, Postmodernity Second Edition, The Univ. of Minnesota Press, 1999, p.86)。

これまで私は新自由主義と全体主義(ファシズム)を重ね合わせて批判する論調は理解できなかった。新自由主義思想は国家権力に対して個人の自由を確保することを問題意識としており、全体主義が嫌ならば旧ソ連など左翼の全体主義こそ身近な問題として猛省すべきだろう。新自由主義の独裁には反対であるが、プロレタリア独裁は大歓迎というならばダブルスタンダードになる。その考えは変わっていないが、社会主義的な全体主義とは別に新自由主義的な全体主義というものも成り立ちうることを本書から感じた。

林田力

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