『シャープ「液晶敗戦」の教訓』

林田力

中田行彦『シャープ「液晶敗戦」の教訓 日本のものづくりはなぜ世界で勝てなくなったのか』(実務教育出版、2015年)はシャープを中心として日本の家電業界の低迷の原因を分析し、復活の処方箋を提言した書籍である。

著者はシャープで液晶の開発に携わり、現在は技術経営の研究者である。そのために本書には当事者としての立場と研究者としての分析者の立場が合わさっている。著者は技術者出身であるが、過度の技術信仰を敗因に挙げており、技術バカ的な偏狭さはない。以下のように消費者視点を有している。「技術研究から製品開発へ持っていくには、技術の価値を消費者(ユーザー)の価値に変換する必要がある」(220頁)

シャープの盛衰は亀山工場の成功と堺工場の失敗に凝縮される。著者は堺工場建設は間違いではなかったが、過大投資であったと指摘する(165頁以下)。堺工場は亀山工場よりも巨大設備であったが、工程は亀山工場と同じで技術革新はなかった(172頁)。大艦巨砲主義に固執した日本軍と同じ過ちを繰り返している。重厚長大からの転換は高度成長が終わった時点で言われたことであるが、本質的な意味で脱却できていなかった。

このシャープの敗因は日本の家電業界全体の問題でもある。日本の家電業界は韓国に追い抜かれ、中国・台湾に追い上げられるというサンドイッチ状態である。日本の家電業界の低迷は垂直統合から国際水平分業へというトレンドを読み誤り、逆行したことである。国際水平分業を可能にした要素はモジュール化である。これによって生産設備を持たないファブレス企業も活躍できるようになった。

これは非常に有意義な進歩である。この意義は積極的に評価したい。垂直統合の全体最適よりも水平分業の部分最適が勝る。素人考えでは全体最適が上に感じるが、神ならぬ人間が全ての現場を把握して最適解を提示することは不可能である。一部に利益があるが、一部には不利益で非効率な解の押し付けになる。これが経済学で新自由主義が隆盛した要因である。新自由主義に批判したいことはあるが、この点は押さえておきたい。

一方でモジュール化によって標準規格が重要になる。この標準規格を誰がどのように決めるかが問題になる。非効率な標準規格が定められ、是正されなければ、その弊害は甚大である。

本書は敗因の一つに日本企業が人を大切にしないことを挙げる(77頁)。これは同感であるが、その例として青色発光ダイオードの中村修二氏を挙げることはどうだろうか。日亜側はチームの開発の成果と述べている。もし日亜化学工業が中村氏の一人を満足させるような処遇をしたならば、チームのメンバーは逆に不満を抱くだろう。その方が人を大事にしない経営になる。

本書の表紙はキーワードが並べられている。一般論として文字情報よりも画像情報の方がアピール力はあるとされる。そのために表紙にはイラストが描かれることが多い。本書は逆に新鮮である。本書のタイトルだけではシャープや液晶に関心のある人限定という面もあるが、キーワードによって経営全般に関心を持つ人も惹きつけている。


林田力


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