『大尉の盟約』

林田力

ロイス・マクマスター・ビジョルド著、小木曽絢子訳『大尉の盟約 上下巻』 (創元SF文庫、2015年) はスペースオペラである。マイルズ・ヴォルコシガンを主人公としたシリーズ作品であるが、本書の主人公はマイルズの従弟イワン・ヴォルパトリル大尉である。サイドストーリー的な位置付けである。

マイルズ・ヴォルコシガンは名門貴族の御曹司であり、聴聞卿という皇帝の信任厚い地位にいる。彼は身体的なハンディキャップや周期的に発作が起きるという不治の症状を抱えるなど圧倒的なヒーローではなく、そこに物語としての面白みがある。それでも最後は水戸黄門の印籠のように地位がものを言うという側面がない訳ではない。それに比べるとイワンは軽い。圧倒的な主人公ではなく、ハラハラドキドキしながら物語を楽しめる。

もっともイワンも軍内の階級こそ低いが、皇帝との関係という宮廷序列は、かなり高位である。それでも国家や王朝の行く末を真剣に考えるようなキャラクターではないことが軽さを出している。

本書のヒロインは豪族の娘であるが、家が乗っ取られて逃亡、潜伏の身である。世間知らずの姫君ではなく、陰謀渦巻く世の中を渡り歩くための知恵を教育されている。以下の台詞は公平というものを考えさせられる。

「両親からしっかり教えこまれたことがひとつだけあるんだけど、それは両方の力の差が大きすぎるときには、契約は不可能だってことなの。力の大きい側が皮膚を擦りむく程度でも、小さいほうは丸裸になるから」(上巻155頁)。

単純な機械的平等では逆に不公平になる。皆が同じ打撃を受けることは機械的平等であるが、殴られて死ぬ人もいる。そのような相違を無視して同じ負担を迫ることは公平ではない。

本書の舞台はコマールとバラヤーであるが、主要登場人物はジャクソン人である。ジャクソン統一惑星は統一的な国家権力がなく、複数の商館がせめぎあう無法地帯である。ジャクソン統一惑星は資本主義が行き着いた先と説明されることがある。武器が売買されるなど何でもありの社会である。日本もブラック企業やブラックバイト、貧困と格差の拡大が問題になっており、望ましくない未来として恐怖感を覚える。

但し、本書で登場したジャクソン人は契約を大切にするというポリシーを持っている。自分が約束したことは守らなければならないということである。これは日本的な無法地帯とは異なる。日本的な無法地帯ならば強者は自分にとって都合の良いルールは押し付けるが、自分にとって都合の悪いルールは後から反故にしかねない。日本に比べればアメリカ的な資本主義の行き着く先にはフェアなところがある。

そして誓約の重みは封建的なバラヤー人にもかかってくる。本書のタイトルが『大尉の盟約』となっているように、主人公も言葉の重みに拘束される。バラヤー人とジャクソン人という全く異なるタイプに見えながら、通じるところが生じる所以である。


林田力

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